武田真理子氏Mariko Takeda
GMOペイメントゲートウェイ株式会社コーポレートサポート本部 執行役員 経理財務部 部長
2004年3月慶應義塾大学経済学部卒業。同年11月公認会計士二次試験に合格して、あずさ監査法人に入所。国際部にて監査事業に従事する。10年クックパッド株式会社入社。13年同社、経営管理部部長。16年GMOペイメントゲートウェイ株式会社入社。現在に至る。
会計で仕事の基礎を学び、成長企業へ転身
―ご経歴を教えてください。
大学時代、「実学的な、仕事に直接役立つ勉強をしたい」と考え、会計士の勉強をしました。卒業と同時に資格を取って監査法人に入所し、約6年監査の仕事に携わりました。基礎を学んだ後、「何がしたいか」と考えたとき、「興味の有無が明確な自分の性格から考えて、自分が好きだと感じた会社で働くのがよいのでは」と思い至り、事業会社で働いてみようと思いました。同時に、マニュアルやルールの遵守に重きを置く仕事よりも、「本来あるべき姿」を考えたり、実行したりする方が好きだとも感じていたので、大企業よりもベンチャーで「今後をつくっていく会社」に転職しようと考えました。当時、IT系の会社が花盛りでその候補となりましたが、社会的な意義を感じられ、社風が自分と合い、成長性が大いに期待できたクックパッド株式会社に入りました。入社時は、1年契約の契約社員で経理スタッフとしての採用でした。しかし、会社が成長すれば多くのチャンスがあるだろうと感じていました。入社当初は、決算短信の作成、監査法人対応等決算業務を行っていましたが、想像通り、会社が成長してくると足りないポジションが増え、やるべき仕事だけどまだ誰もやっていないような仕事がたくさん出てきました。ベンチャーだと、それを勝手にやっても誰も怒らない(笑い)。そうやって主体的に自分が必要だと思うことをやっていれば、忙しくても、楽しいし、ストレスも全くない。6年間、決算から始まり、予算管理、IR、M&A対応、IFRS移行、グループ会社ができればグループ会社管理等々、懸命に仕事に打ち込みました。同社は利益ベースで約20~50%の成長を続け、6年間で時価総額は300億円程度から最高3000億円程度にまで伸びました。入社時社員70名程度でベンチャーの名残のあった会社が、会社としてのかたちを整え始めていきました。その過程を経験できたのはよい勉強になりました。
2016年に経営陣が交代したのをきっかけに転職することにし、GMOペイメントゲートウェイ株式会社とのご縁をいただきました。風土の違いはありますが、思った通り成長企業ならではの感覚は同じで、「前職で培ってきたスキルがこの会社でも活かせる」と思いました。たくさんの新規事業が検討され、実行されていく中で、アイデアや方向性を出して皆で議論していく。そういうところが凄く面白い。
よりよいチームづくりのための”採用”の重要性
―ご経験から学ばれたことは?
チームで協調して働くことでしょうか。監査法人時代は多くのことがマニュアル化されているし、みな会計のことがわかっていますから、極端な話、一日中話をしなくても仕事は進みました。しかし、異なるバックグラウンドの人が集まり、ルールが出来上がっていない成長企業では、コミュニケーションをとらなければ仕事は進みません。経理財務だけでなく法務、営業、システムといった他部署の方と話し合いながら、いろいろな仕組み、制度を検討してきました。また、「財務諸表を実際に利用している人と会ってみたい」という思いからIRにも参画し、投資家と対話する機会を得られたのもとてもよかった。様々な立場の方とコミュニケーションをとる経験が増えたことで、より幅広い視点から多面的に物事を考えられるようになったかなと思います。
もう一つは、チームメンバーとの仲間づくりの重要性です。会社の規模が小さな頃は自分が頑張ればなんとかなっても、会社が大きくなると一人でできることには限りがあります。チームで目標を実現して行くには、「いいチーム」をつくらなければなりません。それには、「採用」が極めて重要だと考えるようになりました。会社の方向性やチームにフィットする方を採用するために、そのイメージを具体化すること。採用活動はチームメンバーにも加わってもらい、採用の方向性を話しながら、今のチームの課題や方向性をすり合わせる。そうやって、面接までの道筋や面接の仕方などをよく考えるようになってから、「いいチーム」ができるようになったのもよい経験になりました。
落ちているボールを自ら拾う
―経理スタッフに求めるものは?
「一つひとつの仕事の目的を自分で考えること。最後までやり切ること」です。仕訳を一つ切るにも、背景を理解し、目的を考えてその達成をゴールとするのと、言われたことをただやるのとでは、仕事のレベルの差は歴然です。どれほど簡単な仕事であっても、「言われたことをやる」人の仕事はチェックが必要でマネジメントコストがかかる。チェックされるほうも決していい気分ではありません。一人ひとりが主体的にやる気をもって働き、それぞれが落ちているボールを自発的に拾うようなチームでありたい。そのためには、やはり会話が大事だと思います。一緒に階段を上っていけるような人材が集まれば、必ずいいチームができると思っています。
―AIやRPAへの取組みは?
RPAを活かすには、その前提としてデータの整理やプロセスの最適化が重要です。まずは自社の業務フローを十分に整えることが必要だと思います。土台を整えながら、RPA含め新しい経理の仕組みは積極的に取り入れていきたいと思っています。
―最後に読者へのメッセージを。
経理部門というと、真面目に黙々と仕事をする人が多いように思います。もちろんそれも大事ですが、もっと個性を出して楽しく仕事をする経理人材が増えてほしい。会計の知識を活かして他部門と関わることで、新しい道が拓け、打席は必ず回ってくると思います。
―本日はありがとうございました。