トピックス

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2016 Winter

この記事は2016年2月発行の「JBA JOURNAL」に掲載されたものです。内容及びプロフィール等は掲載当時の情報となります。

“Accounting is the language
for business”
を目指して。

石川一志氏

石川一志氏Kazushi Ishikawa

サントリービジネスエキスパート株式会社
執行役員 経理センター長

1960年、広島県生まれ。大阪大学経済学部卒業。1984年サントリー株式会社入社。97年ティップネス出向。2002年サントリー株式会社経理部課長。05年同経理センター大阪センター長。09年4月持株会社制移行に伴い、サントリービジネスエキスパート株式会社に分社。10年サントリービジネスエキスパート株式会社執行役員経理センター長、現在に至る。

大きな変化の流れの中に経理部は30年間置かれ続けた

―ご経歴を教えてください。

1984年にサントリー株式会社に入社しました。最初の配属が経理部でした。当時は、いまのような純粋持株会社制ではありませんでした。入社以来、大阪に6年、東京の経理部に7年半、通算13年半経理部にいました。その後、子会社(ティップネス。2014年に売却)に5年間出向して、経理財務をベースとしながら人事や総務、情報システムなど多くの経験をさせてもらった後、経理に戻り、今日に至っています。

―この30年間で、経理の仕事はずいぶん変化してきました。

そうですね。ことにITの進化は凄まじいものがありました。1985年にはプラザ合意、Windows1.0の登場と世の中全体が激変しました。日本もITもグローバルな変化の渦に飲み込まれ、日本はバブルの階段を駆け上がった時代です。グローバリゼーションという大きなうねりの中で、会計ビッグバンが始まり、ルールが変わり、開示が変わり、内部統制が始まり、そしてIFRSへ。経理部は、そうした中に置かれ続け、制度の変化に翻弄されてきました。
その後、経済状況も変化の兆しが見え始め、会社自体も海外で大ぶりな会社を買収したことによって、大きく変化してきました。いまだ大きな流れの中の一時点にいる、と感じています。数年前までは完全にドメスティックでよかったのですが、海外子会社と直接コミュニケーションする必要性が生じてきました。以前は国際部のような部署に英語の流暢な人がいて、その人を介してコミュニケーションしていましたが、そうした部門そのものがすでにありません。今は、どのファンクションも海外にある事業会社の同じファンクション同士でコミュニケーションをとらなければなりません。これは非常に大きな変化です。

10年後も必要とされる経理財務であるために

―経理・財務に求められる人材像についてはいかがでしょうか?

当然、経理財務に求められる役割も変わってきました。私は、この先、これまでよりもさらに大きな変化があるだろうという気がしています。
オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授は、10年後、米国労働省の702種類の仕事の50%は失われるというセンセーショナルな研究論文(『未来の雇用』)を発表しました。その中で、会計事務員の消滅率は90%超で、数ある職業の中でも消滅率の高さはトップクラスでした。将来を考えたとき、我々の領域も人工知能で置き換えられる時代がくる、という見方もあります。
これからの時代も、もちろん会計や財務の高度な知識を持った人材は必要です。加えて、ビジネスパートナー的な事業視点でいろいろなことが考えられる、付加価値を提供できる人材が求められていると思います。

これからの経理人材に必須の四つの力

―そのために何が必要でしょうか。

かつて経理人材に求められる「読み・書き・そろばん」と言えば、簿記と当時出始めたパソコンでした。今はベースとなる会計リテラシーの上にITリテラシー、異文化を受け入れる力、そしてやはり事業理解力が必要だと思います。この四つの力がなければ、事業会社やグループ全体のための付加価値は提供できないと思います。
ただし、変革しながらも、最後まで守らなければならないものがあるのが我々の仕事です。経理はラストリゾートだと言われます。その役目、役割はどう時代が変わっても変化することはありません。守りの重要性から目をそむけてはならないと思っています。

事業に貢献できる情報・価値の提供で経理の仕事は面白く

―経理財務に携わる方々に向けて、メッセージをお願いします。

経理の仕事を面白くしていきたい。求められる役割が変化する中で、さまざまな変化や時間の制約の中で、一年中、固定的な仕事に追われ続けているのが第一線の現実だと思います。そうした中で、経理の仕事をどうすれば面白くできるかを、自分にも常に問いかけています。
日々の仕事を面白く行うためのモチベーションの原則は、成長実感と他者承認だと思います。日々成長しているという感覚がないと人は仕事をやっていけないし、なによりも他者承認されることが大事だと思います。そのためには、より事業に貢献できるような情報や価値の提供が求められます。
シェアードの一番のデメリットは、現場との隔絶です。効率性は上がるけど現場から遠くなる。弊社はほとんどの社員がホールディングスからの出向者で構成されていますから、純粋なシェアードとは少し異なりますが、現場から遠くなることに違いはありません。そういう中で、より事業に貢献できるような情報なり、価値をどう提供できるか。
“Accounting is the language of business”という言葉は、我々の仕事の拠り所になります。グローバルに成長していくにも、会計が共通言語としてあり続けることは大事にしていきたいと思います。しかしこの先は徐々に、”Accounting is the language for business”でなければ付加価値を提供していけないと思っています。
そのために将来必要になる体験を、メンバーの人たちにいかに重ねてもらうか。それがいまの私自身の課題でもあります。

―本日はありがとうございました。