櫻井素美江氏Sumie Sakurai
米国公認会計士ピラティスインストラクター
ドルトムント市立歌劇場専属バレリーナ(ソリスト)等を経て、2009 年USCPA 全科目合格。2010 年Stott Pilates 公認インストラクター取得、ピラティススタジオにてパーソナルトレーナーとして業務委託契約。2012 年( 旧) 株式会社 オカモト・アンド・カンパニー(現在のOC & associate 株式会社)にて正社員勤務。2015 年JBA 税理士法人(業務委託契約等)にて外資系金融会社等の経理・会計を担当。
舞踏の道から経理・会計の道に
―ご経歴を教えてください。
6歳頃からクラシカルバレエを始め、中学卒業後、英国の高校にバレエ留学しました。寮生活をしつつ4年間バレエ学校に通いました。卒業後、オランダの国立の舞踏大学に入学し舞踏の学士号を取得。その後、ドイツにわたって歌劇場の専属バレエ団で活動しました。
海外のバレエダンサーは26歳くらいになると第二の人生を考え始めます。バレエダンサーやバレエ講師として活躍する方もいれば、振付家等の芸術方面でバレエ界に残る方もいますが、まったく異なる分野で活躍される方もたくさんいます。私もその年齢になったとき、何ができるか、何がしたいか考えました。バレエは20年間やってきたので全く違うことを勉強しようと思い、経営学を学ぶためにオランダの国立のファッションマネジメント大学に入学しましたが、入学直後、母が病気になり帰国。看病しながら勉強できると思って始めたのがUSCPAの勉強でした。実務経験のない中での資格取得でしたが会計の勉強は面白かった。その後、簿記2級の資格もとり、経理財務の仕事に就こうと考えるようになりました。
資格取得と求職活動
―会社探しはむずかしくはありませんでしたか。
子供が生まれるなどして最初は会計の仕事につけず、託児所併設のスタジオを持つ会社でピラティスのインストラクターを始めました。
子供を預ける保育園が見つかったとき、会計の仕事を探し始めました。確かに実務経験がなくてもOKという会社は多くなく、会計事務所を中心に職探しを行いました。その結果、100%外資の会社をクライアントとする会計事務所で正社員として働き始めました。32歳のときでした。
―資格取得が有効だった?
私のように会社勤務の経験がない人間の場合、資格がなくて英語ができるだけでは、「海外でバレエをやっていたので」で終わってしまったと思います。資格があったから、逆にそれまでの経験のユニークさに興味を示してもらえました。その意味では、資格は非常に有効だったと思います。
―初めての経理財務のお仕事はいかがでしたか。
入社した会計事務所は、外資企業の日本法人の経理、税務、給与をすべて引き受けていました。最初は簿記の知識でできるような業務ばかりで、とても楽しかった。周りは20代の方ばかりではじめは少し違和感もありましたが、会計業界では同じ1年生という共通項があったので和気あいあいとした雰囲気でやれたと思います。自分に合った仕事だと思いました。
二人目の子供ができたとき、残業も多くなっていたので正社員でやっていくには厳しいと考えいったん退職しました。働き方を考えていこうとしていた時期でもあり、よいタイミングだと思いました。
“業務委託”という働き方
―その後、業務委託という働き方を選ばれたのは?
当初、二人目の子供が生まれたばかりでしたから、週3日程度働こうと思っていました。当初は派遣も考えましたが、いろいろと探している中で業務委託という形態があることを知り、自分にあっていると思いました。個人事業主として自分で確定申告等を行わなければなりませんが、派遣よりも自分でスケジュール管理できるなど、コントロールできる部分が多いところに魅力を感じました。例えば、明日子供の学校行事があってどうしても会社に行けないときは、前倒しで仕事をするなど、自分で管理できるのが大きなメリットだと思います。
もちろん業務委託では、社会保険に入れない、収入や雇用が不安定である等のデメリットもあります。毎月の仕事量によって報酬は変化しますし、契約期間終了後、継続される保証はありません。私の場合は派遣社員でも週3日では社会保険に入れる時間数を満たさないので、結局は自分で入るか扶養内で働くかでしたし、そのあたりのデメリットを感じることはあまりありませんでした。
―働き方の選択肢が増えたことについてはどう感じられていますか。
子供を持つ身としては、自分で働き方が選べるのはありがたいと思っています。私は今、ピラティスインストラクターも週2日行っています。正社員でダブルワークが認められている会社はまだ多くはありません。他の仕事もやってみたいという人には、業務委託や派遣といった形態はお薦めです。自分の生活にあった働き方が選べるという意味では選択肢が増えたことはよかったと思います。
最近は働き方改革で、在宅勤務などリモートワークが可能な会社が増えてきたことも、子供が小さいお母さんたちにとってはメリットなのかな、と思います。ずっと働き続けていきたいという思いが叶う時代になりつつあると思います。
―働き続けたいと思われるのは?
母親としてだけでなく一人の人間として認識してもらいたい、という思いが働く大きなモチベーションになっています。子供も大切ですし、子育ても大事にしなければなりませんが、子供はいずれ巣立っていきます。「そのとき抜け殻にならないように、今からやりがいとなる仕事をもっていたほうがいい」と夫も言ってくれます。
―最後に今後の抱負をお聞かせください。
子供も成長していくので、もっと仕事量が増やせるようになれば、今までのような、指示や依頼されて仕事をする立場から、逆に指示が出せるような立場で仕事をしていきたいと思います。60代、70代になっても、経理財務の仕事だけでなく、ピラティスの仕事も続けていければと思っています。
―本日はありがとうございました。